2026年7月|花と布|篠原君子
2026.07.01
子どものころから花に親しみ、身に着ける花や飾る花のある暮らしが身近にありました。1975年頃からマミフラワーでフラワーアレンジメントを学び、後に講師資格を取得。カルチャースクールなどで指導を行い、50年を経た今も花のある暮らしを続けています。
マミフラワーの創設者・マミ川崎先生には、花の技術だけでなく、生き方そのものを学びました。大森の旧マミ会館は、芸術家・岡本太郎氏が設計した建物で、見る位置や角度によって、様々な表情を見せる不思議な建築で、自由で創造の空気に満ちた場所でした。アメリカ留学経験のあるマミ先生は、花だけにとどまらず布やさまざまな素材を大胆に取り入れながらも、美しく調和させていきました。振り返れば、フラワーアレンジメントだけではなく、「自分らしいものづくり」と「ライフスタイル」を教わったように思います。
40代に入る頃からは、お花だけではなく、テーブルコーディネートや、空間全体の演出へと活動の幅が広がりました。チェコスロバキア世界料理コンテスト(1990年)、シカゴ世界料理コンテスト(1991年)、フランクフルト料理オリンピック(1992年)では、日本代表チームのテーブルコーディネーターとして参加しました。
当時は「芸者」や古い日本をテーマにしようという意見もありましたが、1990年当時の豊かな日本を表現しようという方針となり、チーム一丸となって試行錯誤を重ねました。和菓子で盆栽を表現してテーブルセンターを飾ることもありました。二度の世界大会優勝に携われたことは、その後の活動の大きな励みとなっています。そこで出会ったシェフの方々とは、現在も交流が続いています。
テーブルコーディネートを追求するなかで、布を用いたファブリックアート制作のひとつとして箱の制作も始めました。こうした活動が評価され、日本におけるオーベルジュの先駆けである那須高原の二期倶楽部へ招かれ、イベントのコーディネートやレディースサロンの講師、作品展を行う機会を得ました。
二期倶楽部には、英国のデザイナー、テレンス・コンラン卿がプロデュースした空間や、隈研吾氏による石を用いた建築などもあり、棟ごとに異なるテーマが設けられていました。松岡正剛氏によるアートコロニー構想や、細川護熙氏の陶芸作品発表など、多彩な文化活動が行われていました。多くの人々との出会いは、私の創作活動に大きな刺激を与え、その後のさまざまな制作へとつながっていきました。
60歳を過ぎてからは表装を学び始めました。幼い頃から、玄関には屏風と花、床の間には掛け軸と花が飾られた季節の室礼がありました。表装を学ぶことは、私にとって自然な流れだったように思います。屏風は空間を仕切り、隠し、場を整えるための優れた道具でもあります。現代の住宅やマンションにも取り入れやすいよう、小型の屏風制作にも取り組んでいます。
表装は、まず木材で骨組みを作るところから始まります。花や空間演出とは異なるものづくりですが、上質な和紙や布を用いる点では共通しています。京都の龍村美術の織をはじめ、アジアの布、ヨーロッパのレースやリボン、ボタンなどが好きで、長年布に触れてきました。織りや染めの細やかさ、素材の風合いには時代ごとの変化があり、その違いを感じることも楽しみの一つです。
今年12月で84歳になりますが、現在も毎朝ものづくりを行い、スポーツジムに通い、友人と語らい、展覧会や催しに出かけています。若い世代との交流から新しい刺激を受けながら、これからも花と布のある暮らしを楽しんでいきたいと思っています。


旧宅でお雛様の会食・二期倶楽部でのテーブルコーディネート ※画像をクリックすると詳細が表示されます



料理オリンピック時代 ※画像をクリックすると詳細が表示されます



お花からインスピレーション得て ※画像をクリックすると詳細が表示されます



朝の制作・監修を務めたムック本・『箱』シリーズ・※画像をクリックすると詳細が表示されます
篠原君子|Kimiko Shinohara|フラワーデザイナー・空間コーディネーター・表装創作家|2026年6月
聞き手・文 古賀るみこ(RMKK+管理人)
■次回予告Journal 2026年8月■
『紅型が語るコザの物語』
金城宏次 Hiroji Kinjho
(紅型作家)
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