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紅型が描くコザの街|金城宏次氏|2026年8月

2026.07.11

 沖縄本島中部、米軍基地の街・コザ(現・沖縄市)の中心部で生まれ育った。子どもの頃は近所の仲間たちと米軍基地のフェンスの隙間から忍び込み遊んだこともあったという。兵士と目が合って銃を向けられることもあり、「今思えば危険な遊びだった」と笑う。やがて少年野球に夢中になった。特に絵が好きだったわけではなかったが、校内の写生大会で、赤瓦の民家や身近な風景を描くと賞をもらうことが多かった。高校時代、教師に沖縄県立芸術大学への進学を勧められ、画家・城間喜宏氏のもとでデッサンを学び始める。

 ※画像をクリックすると詳細が表示されます。文末に制作工程の画像を掲載しています。

 浪人時代からTシャツショップでバイトした。デザインを起こし、シルクスクリーンの版下制作に携わるなかで、「その工程が紅型の型づくりとよく似ていることに気づいた」と振り返る。それが後に紅型の世界へ進むきっかけとなったという。大学進学後もアルバイトを続けた。「構図の確かさが、ショップから重宝されていたと思う」と話す。大学卒業後は首里の名渡山工芸館(紅型工房)に入り、本格的に伝統的な紅型を学ぶ。27歳で独立し、2026年は工房創設30周年の節目を迎えた。伝統的な紅型を基盤としながら、表現領域を広げ続けてきた。金城氏が向き合い続けてきた紅型とは、そもそもどのような染織技法なのだろうか。

「紅型とは一言でいうと…?」との問いに、「あちら(海外)から入ってきたものでしょうね。その歴史は約400年になるといいます。ただ、『紅型』という名称が定着したのは大正時代だと言われています」。金城氏によれば、中国の印花布(いんかふ)の型染め技法の影響を受けたという説が一般的だという。「模様については中国だけではありません。更紗の文化や、日本本土から伝わったと思われる草花文様もあります。さまざまな文化が沖縄で交わり、紅型を形づくったのだと思います」と語る。

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 紅型技法を活かして、1999年当時よく通っていた近所のBARのカウンターを描いた。その紅型作品は店内に飾られ、「これ、ほんとに紅型なの?」「紅型でこんな表現ができるんだ」と驚かれ話題となった。2001年に制作し公募で入賞した「首里城」は、沖縄県立芸大に通っている頃に、毎日見ていた風景を描いたのだった。この作品は、首里城焼失の翌2020年に地元新聞社のラッピング紙(※1)に採用され、「よみがえる日 信じて」の見出しとともに、多くの人たちに喜びと感動をもって迎えられた。

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 2002年には、海外を拠点に活躍する現代美術家・照屋勇賢氏と出会い、照屋氏の紅型作品の制作に関わるようになる。現代アートとの協働を通して、紅型は従来の工芸や染織の枠を越え、国内外に広がった。「紅型が多くの人に知られることが嬉しい」と金城氏は語る。制作に携わった『結ーYuiー』という作品が、2023年に大英博物館に収蔵され、制作者として自身の名が記された。「まさか俺の名前まで載るとは思わなかった。今まで紅型を続けてきてよかった。作り手として報われた気持ちでした」

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 創作の根底には、幼い頃から見続けてきたコザの風景と沖縄の暮らしが息づいている。沖縄の食卓でおなじみのポークランチョンミートの缶、子どもの頃には近づいてはいけないと言われたネオン輝くゲート通り、ベトナム戦争へ向かう米兵たちがBARに残した1ドル紙幣。

 また写真家・豊里友行氏との二人展では、彼が撮影した有刺鉄線や海岸に打ち上げられたガラス瓶の写真を題材に紅型作品を制作するなど、伝統技法の可能性を広げる試みも続けてきた。伝統技法を現代の視点で読み替える試みも続けてきた。金城氏が描いているのは、戦後のコザで生きた人々の記憶であり、その土地に流れてきた時間そのものなのかもしれない。それらは紅型という技法を通して新たな物語となり、再び布の上によみがえる。

 アジアとの交流のなかで育まれた紅型。その可能性を広げ続けている金城氏は、あらためて帯や着物など王道の表現にも向き合い始めている。

金城宏次氏|Hiroji Kinjo | 紅型作家

(※1)琉球新報社が制作した首里城復興応援のラッピング紙とは、新聞の一面から最終面を一枚に構成したデザイン。

過去作品など

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『koza bc st』(四枚組)の制作工程

・二度ぬり隈とり後→一週間乾燥 →糊伏せ完了 
次の工程:背景を配色→二度ぬり→一週間乾燥後→朧型の型置き→水引→二度ぬり→乾燥後→水元

・灰・黒灰色・セピア色で配色 次の工程:黒の配色・空に淡い灰色で配色

黒と淡い灰色の配色-完了

・二度ぬり~二度ぬり完了 次工程:街並みを紙で伏せて空に型置き

・空に型置き後→地入れ完了→セピア色二度ぬり→一週間乾燥→蒸し→水元

 四枚の作品が生まれるまでには、想像を超える時間と手仕事が積み重ねられています。この制作工程から、紅型の奥深い魅力を感じていただけましたら幸いです。

聞き手・文 古賀るみこ(RMKK管理人)

 

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