Textile Story

包む布|2026年9月

2026.09.01

 一枚の布でものを包む。風呂敷は包むものに合わせて姿を変え、使い終えれば、また一枚の布に戻ります。

 インドネシアでも、布が暮らしの中で自在に使われる風景を、たびたび目にしました。バティックの布を巧みに使って子どもを抱き、荷物をくるんで頭に載せて運ぶ。
 一枚の布が、身体を包み、人を支え、ものを運ぶ道具にもなります。

 私自身も、旅に出るときには、バティックのカインパンジャン(長い腰衣用布)を何枚か持っていきました。シャワーの後には腰にに巻き、ベッドやサンラウンジャーのシーツにし、ときには荷物を包む。帰国の日には、増えた荷物をまとめる風呂敷代わりにもなりました。

 一枚の布が、その時々に必要な役目を引き受け、使い終えれば再び一枚の布に戻る。その姿は、日本の風呂敷にも通じています。

 そして、ときには茶碗を旅先へ携え、その土地で湯を沸かし、一服の茶を楽しむ。

 20年くらいまえのまだ若い頃は、旅先で地元お酒や薬酒、ハーブティなどを楽しもうと、ニュージーランド出身の陶芸家ポールロリマー氏のゴブレットを、絹のバティックで仕覆を作っていただき持ち歩きました。このカップでほろ苦いジンジャーティやジャムウ、ラオスではラオ酒をいただきました。(画像・上左)

器を受ける古帛紗や出袱紗。帛紗や懐紙、扇子などを収める数寄屋袋。
一枚の布が、あるときはものを運び、あるときは器を守り、またあるときは装いとなる。

「エコ」や「サステナブル」という言葉が生まれるずっと以前から、暮らしの中には、ものを包み、大切に扱い、繰り返し使う知恵がありました。

 水野さんが手がける刺繍の箱もまた、その延長線上にあります。布で包むように、内側に手をかけ、時間をかけて仕立てられた箱は、大切なものを収めるだけでなく、それ自体がひとつの「包むかたち」として存在しています。

 包む布をたどってみると、そこには美しさだけではなく、ものと長く付き合うための暮らしの知恵と、布を楽しむ心が見えてきます。

文・古賀るみこ(RMKK₊管理人)

【次回予告】
かぶせる布―守る、隠す、そして現す|2026年10月

【Textile Story・過去記事】
海の道|2026年8月 | RMKK+
ジャワ更紗に描かれるインド・パトラ|2026年7月 | RMKK+
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